学習力と仕事力のギャップ
IQとEQのバランス
2023年5月27日
著者: 竹洞 陽一郎
はじめに
新しい情報を速やかに摂取し、独自の洞察を創造的に引き出す能力を持つ人々は、しばしば我々の目を引きます。
しかし、驚異的な学習能力が、同様に卓越した職場でのパフォーマンスに直結するとは限らない、という現実を見落としてはなりません。
学習の成果を実務に適用するスキルが不足していると、その人は職場で「活かせない才能」とのレッテルを貼られてしまうかもしれません。
では、このような非対称性はどこから生じるのでしょうか?
学習力と仕事力のギャップ:その存在理由
学習能力は、情報の理解、記憶、そして応用のスキルに基づいています。
一方で、「仕事力」つまり、仕事で成功するための力は、技術的スキルに加えて、コミュニケーション、チームワーク、問題解決といったソフトスキルも含む多面的な能力を必要とします。
ここで、学習が得意な人と仕事ができる人が常に一致しない理由について掘り下げてみましょう。
- コミュニケーションスキルと社会性
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学習能力が高い人は独自の視野や洞察を持つことが一般的です。
しかし、それらを他人に効果的に伝達する能力が欠けていると、その知識はチーム全体の価値創造に貢献することが難しくなります。
さらに、チームプレイやチーム内での調整は、高度な社会性とコミュニケーションスキルを必要とします。 - プロジェクト管理と時間管理
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学ぶことが中心の人は新知識の追求に没頭しやすく、その過程で時間管理や優先順位設定が軽視されがちです。
しかし、実務では、プロジェクトの進行状況の把握と時間管理は重要な要素です。 - 柔軟性と忍耐力
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学びを楽しむ人は、自身の知識やスキルが常に進化し変化することを期待します。
しかしながら、実務の場では常にそのような動的な状況が待っているわけではありません。
安定した一貫性とルーチン作業の重要性、あるいは困難な状況に対する忍耐力など、学びからは必ずしも得られない資質が求められることも少なくありません。
IQ(知能指数)とEQ(情緒指数):学習と仕事の成功への鍵
学習能力と職場でのパフォーマンスの間の違いは、IQ(知能指数)とEQ(情緒指数)の比較として部分的に理解できます。
日本では「心の知能指数」という訳が一般的ですが、ここではより原義に近い「情緒指数」という訳を用います。
IQは、個々の認知能力を評価する指標であり、情報理解、記憶、問題解決能力などを測定します。
これらの能力は、新たな情報の学習や適用に必要なスキルを反映しています。
このため、高い学習能力を持つ人々は、一般的に高IQ傾向にあるといえます。
一方、EQは個々の情緒的知性を評価する指標であり、自己認識、自己制御、社会的認識、関係性管理といった能力を評価します。
これらの能力は、他者との関係構築や維持に不可欠であり、職場での成功において大いに重要な役割を果たします。
コミュニケーション、チームワーク、共感などのスキルは、高EQを有する人々の特徴といえます。
従って、学習能力と職場パフォーマンスの間の差異は、IQとEQのバランスの問題と捉えることができます。
IQが高く学習能力が豊かな人でも、EQが低ければ対人関係や感情管理に課題が生じ、結果的に職場でのパフォーマンスが低下する可能性があります。
一方で、EQが高く人間関係が得意な人でも、IQが低ければ複雑な問題解決や新たな情報の学習に難渋することもあります。
したがって、職場でのパフォーマンスを最大化するには、IQとEQの両方を均衡良く育成することが重要となります。
学習志向をアピールする際の注意
採用面接を行っていると、「学ぶことが好きです」とアピールする応募者に出会うことがあります。
この発言を聞いたとき、面接官としては注意を引くシグナルと捉えます。
「学ぶことが好きです」という言葉は、応募者が自己成長や自己改善への意欲を示す一方で、潜在的な課題を示唆することもあります。
そのため、面接官としては以下の要素に注意を払っています。
- 学習の優先順位
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学習志向を強調する応募者は、新たなスキルや知識の獲得に重点を置いている可能性があります。
これ自体はマイナスではありませんが、新たな知識を求めることが仕事の主要なタスクを蔑ろにする可能性もあります。
彼らは時間管理やプロジェクトの優先順位設定に困難を感じることがあるかもしれません。 - 理論と実践のバランス
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学びが好きな人は理論的な知識の探求に興味を持っているかもしれませんが、それが実践的なスキルや経験に直結するとは限りません。
一定の理論的知識は重要ですが、仕事においては具体的なスキルや実務経験もまた必要不可欠です。 - 変化と定常性の扱い
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学びが好きな人は、変化や新たな挑戦を求める傾向があります。
しかし、全ての職種や役職が常に新しいスキルや知識を必要とするわけではありません。
いくつかの職種では、ルーチンワークが中心となり、そのような環境に飽きやすい人はパフォーマンスが低下する可能性があります。
したがって、「学ぶことが好きです」という言葉には注視し、その背後にある動機や価値観、そして職務への適合性を評価するように心掛けています。
応募者がどのように学び、何を得ようとしているのか、そしてそれが具体的な仕事のパフォーマンスにどのように影響を与えるのか、という質問をするようにしています。
応募者の視点から考えると、「学ぶことが好き」というのは基本的にプラス要素であり、誤解を招かないように伝えることが重要です。
学習は目的があってこそです。
「学習だけが目的で、仕事は二の次」と誤解されないように、過去の実務で何を学び、それがどのように業務達成や改善に貢献したのかを具体的に示すことをお勧めします。
つまり、仕事の目的を達成するために学習という手段を用い、新たに獲得した知識やスキルを活用した具体例を提示するのです。
まとめ
これらの違いを理解することは、自己成長と職業上の成功の両方を追求するための新しい視座を得る上で重要です。
学習能力を強化することは確かに大切ですが、全体的なパフォーマンスを高めるためには、他のスキルや資質も同時に発展させていくことが必須です。
これが実際の職場での成功を掴むための鍵となるでしょう。