未経験からIT業界へ移るとき、埋めるべき時間の差


著者: 竹洞 陽一郎

未経験からIT業界に移るとき、何が足りないのか。
答えは才能ではありません。
投入した時間の総量です。

どれくらいの差があるのかを、数字で示します。

情報系の学部を出た人は、何時間学んでいるのか

大学の単位は、学修時間で定義されています。

大学設置基準第21条第2項は、1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容で構成することを標準としています。
この45時間には、授業時間だけでなく、授業時間外に必要な学修も含まれます。

卒業に必要な単位数は、同基準第32条により124単位以上です。
したがって、制度上の学修時間は次のようになります。

これは学部全体の数字なので、情報系の専門科目だけを取り出せばこれより少なくなります。
それでも、4年間で数千時間の学修を前提とした設計であることは変わりません。

「日本は30時間、アメリカは45時間」ではありません

日本の単位時間はアメリカより短い、という説明を見かけることがあります。
これは正確ではありません。

「30時間」という数字は、講義・演習の授業時間の上限です。
学修時間ではありません。
授業時間外の学修を含めて45時間、という考え方は、日本もアメリカも同じです。

なお、令和4年度の大学設置基準の改正で、授業時間の区分は「講義・演習は15〜30時間、実験・実習は30〜45時間」から「おおむね15〜45時間の範囲で大学が定める」形に整理されました。
ただし文部科学省は、改正に係るQ&Aの中で、授業時間も含めて1単位あたり45時間の学修が必要であるという基本的な考え方は変わらないとしています。

差が出るのは、制度ではなく実際の学習時間です

制度が同じでも、実態には差があります。

2007年と古いデータですが、文部科学省の調査資料によると、授業以外の週あたりの学習時間は次のようになっています。

制度上は同じ45時間を前提としながら、授業時間外に使われている時間には差がある、ということです。
古い調査なので現在の傾向は確認が必要ですが、少なくとも当時はこの差がありました。

未経験者が向き合うのは、この時間差です

私自身は情報学部の出身ではなく、法学部です。
高校時代からコンピュータを触ってコードを書いていたので、完全な未経験ではありませんでしたが、プロとして働くには知識量が足りませんでした。

当時の私は、その差を私生活の時間と残業で埋めました。
ただし、その方法を勧めるつもりはありません。

理由は2つあります。
第一に、続きません。
繁忙期、体調不良、家庭の事情のいずれかで途切れ、途切れた時点で積み上げが止まります。

第二に、健康を削って身につけた知識は、健康を損ねた時点で使えなくなります。
技術は身体で運ぶものなので、身体を壊せば運べません。

だから当社は、時間を用意する側に回りました。

学習時間を、業務の中に置いています

Spelldataでは、業務時間中の午前3時間を学習時間に充てています。
年間で約700時間、2019年に始めて現在も続いている制度です。

残業時間は2025年8月期実績で月平均1時間、完全在宅勤務のため通勤時間もありません。
私生活の時間を削らずに、この積み上げができます。

ただし、これは「会社が用意した時間に座っていれば身につく」という意味ではありません。
学習時間には給与を支払っています。
理解が進まなければ評価は下がりますし、学習の進捗が芳しくない場合、試用期間で雇用契約を終了することもあります。

会社としては全力で支援しますが、最終的に問われるのは本人が学ぶ意志です。
先に書いておかないと不誠実なので、ここは正直に書いておきます。

傾きの差は、年数に比例して開きます

下の図は、35度で進んだ場合と36度で進んだ場合の到達点の高さを比べたものです。

35度と36度の進む角度による到達点の高さの違いを示すグラフ
35度と36度の違い … 傾きの差は、進んだ距離に比例して開いていく

1度の違いでも、進むほど差は開きます。
複利のように加速するわけではありませんが、傾きが違えば、同じ年数を過ごしても到達点は変わります。

年間700時間と、年間100時間。
この差は1度どころではありません。
5年経てば、3,500時間と500時間になります。

まとめ

時間を用意するのは会社の仕事です。
その時間で何を身につけるかを決めるのは、ご本人の仕事です。

Spelldataの教育制度について