20代女性のための転職戦略 ― 時間をどこに投資するか
著者: 竹洞 陽一郎
転職しないで済むなら、その方がよい場合もあります
最初にお伝えしておきます。
今の会社で身につくものがあり、評価もされているのなら、無理に動く必要はありません。
転職には見えにくいコストがあります。
築いてきた社内での信用、仕事の進め方の暗黙知、勤続年数に紐づく制度。
これらは転職のたびに一度ゼロに戻ります。
世の中には「転職すれば年収が上がる」という話も、「転職回数が多いと生涯年収が下がる」という話も流通しています。
どちらも、業種、職種、転職の理由、次に何を身につけたかによって結果が変わるため、一般化して断言できるものではありません。
少なくとも、回数そのものが結果を決めるわけではありません。
判断すべきは回数ではなく、「この会社にあと5年いたとして、何が身につくか」です。
答えが出てこないのであれば、20代のうちに動いた方が、選べる範囲は広く残ります。
3年未満で辞めることは勧めません
入社して1年、2年で辞めることを、私たちは勧めません。
精神論ではなく、身につくものの積み上がり方の問題です。
最初の1年は、指示された作業をこなす期間です。
2年目に、なぜその手順なのかが分かり始めます。
3年目になって、ようやく自分で判断して動けるようになります。
ここまで来て、はじめて「経験者」と呼べる状態です。
1年や2年で職場を変えると、この積み上げが毎回1年目からやり直しになります。
転職回数だけが増え、どの分野についても「指示されたことはできる」という状態から抜け出せません。
選考する側が見ているのは、在籍期間の短さそのものではありません。
積み上げが途切れていることの方です。
そして短期間で辞めた理由は、次の選考で必ず聞かれます。
環境の話しかできない人と、自分が何を判断して何を学んだかを話せる人とでは、評価が変わります。
ただし、例外があります。
ハラスメント、賃金の未払い、法令に違反する働き方を強いられているといった場合は、3年を待つ必要はありません。
健康を損なってからでは、積み上げた経験を使う場所そのものがなくなります。
この場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口に相談してください。
会社選びを誤ったなら、それも自分の判断です
入った会社に問題があった。
聞いていた話と違った。
実際に起こることです。
そのうえで、転職を考えるときには、その会社を選んだのは自分であるという前提から始めてください。
求人票に書かれた条件だけで判断していなかったでしょうか。
会社のサイトを最後まで読んだでしょうか。
給与の仕組み、労働時間の実績、評価の基準について、選考の場で質問したでしょうか。
調べれば分かったことを調べていなかったのなら、次も同じことが起きます。
「前の会社が悪かった」で終わらせている限り、会社を変えるたびに同じ理由で辞めることになります。
一方で、調べても分からなかったこともあります。
入社しなければ見えない部分は、必ず残ります。
この2つは分けて考えてください。
調べれば分かったことは自分の課題として、調べようがなかったことは次に確認する項目として、それぞれ持ち帰るということです。
Spelldataが、このサイトを最後まで読んでから応募してくださいとお願いしているのは、このためです。
判断に必要な材料は、選考の前に全部お渡ししています。
読んだうえで合わないと感じたのであれば、応募しない方がお互いのためです。
20代で決まるのは年収より「選択肢」です
将来の年収を予測して示す記事をよく見かけますが、前提の置き方でいくらでも変わる数字です。
ここでは扱いません。
かわりに、はっきり言えることがあります。
ライフイベントで働き方に制約が生じたとき、手元に残るのは「場所と時間を選ばずに成果を出せるかどうか」だけです。
出産、育児、介護、家族の転勤。
制約が生じてから慌てて身につけようとしても、そのときには使える時間が減っています。
制約が少ないうちに専門性を積んでおけば、離れても戻れます。
これが実質的な安定です。
なお、代替されやすい仕事かどうかは、職種名では決まりません。
同じ職種でも、判断を任される範囲と、扱える道具の幅で変わります。
Spelldataでは総務も経理も法務も、専門性を積み上げる職種として位置づけています。
「好き」より「強み」から始める
20代でよくある行き詰まり方は、「好きな仕事」を探し続けて決まらないことです。
ピーター・ドラッカーは、成果は強みからしか生まれない、と繰り返し述べています。
強みを活かせる仕事は成果が出ます。
成果が出れば評価され、評価されればやりがいを感じ、結果としてその仕事が好きになります。
順序が逆なのです。
「好きだから成功する」のではなく、「強みだから成果が出て、好きになる」という順序です。
自分の強みと弱みをどう言語化するかについては、別の記事で詳しく扱っています。
Spelldataの選考でも実際に問う内容です。
「業務時間外に2〜3時間」という学習法は勧めません
専門性を身につけるには、まとまった時間が要ります。
「1万時間の法則」として広まった考え方もありますが、必要な時間は分野や練習の質で大きく変わるため、数字を目標にすることにあまり意味はありません。
確かなのは、片手間では届かないということだけです。
問題は、その時間をどこから捻出するかです。
よくある助言は「平日は業務後に2〜3時間、週末も4〜5時間」というものです。
20代なら体力で押し切れる、という前提が置かれています。
私たちは、この方法を勧めません。
理由は2つあります。
第一に、続きません。
繁忙期、体調不良、家庭の事情のいずれかで簡単に途切れ、途切れた時点で積み上げがリセットされます。
第二に、健康を削って身につけた専門性は、健康を損ねた時点で使えなくなります。
Spelldataが社員を「知的アスリート」と位置づけ、健康への投資を続けているのは、そのためです。
Spelldataの場合、学習時間は業務時間の中にあります
Spelldataでは、業務時間内に毎日3時間の学習時間を確保しています。
2019年に始めた制度で、現在も継続しています。
年間で約700時間、5年で約3,500時間になります。
業務時間外を削る必要はありません。
残業時間は、2025年8月期実績で月平均1時間です。
完全在宅勤務のため、通勤時間もかかりません。
条件も具体的に示しておきます。
未経験からの入社で、月給272,000円から400,000円、これに在宅勤務手当が月10,000円加わります。
昇給査定は半年ごとで、月給16,000円から32,000円の幅です。
未経験で入社した場合でも、5年目で年収500万円を目指せる設計です。
将来の年収を大きく見せる数字は出しません。
ここに書いたものは、そのまま募集要項に記載している条件です。
まとめ
- 転職回数そのものが結果を決めるわけではありません。判断すべきは「あと5年で何が身につくか」です
- 1年や2年で辞めると、積み上げが毎回1年目からやり直しになります。違法な状態でない限り、3年は続けてください
- 会社選びを誤ったとしても、選んだのは自分です。調べれば分かったことと、調べようがなかったことを分けて振り返ってください
- 20代で積むべきは年収ではなく、場所と時間を選ばずに成果を出せる専門性です
- 「好き」を探すより、強みから始めた方が早く成果に届きます
- 業務時間外を削る学習は続きません。学習時間が業務の中にある環境を選んでください
特別な才能が必要な話ではありません。
必要なのは、正しい方向に、途切れずに時間を積める環境です。
その環境を自力で作るのは大変なので、会社を選ぶときの条件にしてしまうのが確実です。